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広島高等裁判所 昭和25年(う)152号 判決 1950年11月15日

被告人

矢野巖

主文

原判決を破棄する。

本件公訴を棄却する。

理由

弁護人栗原良哉の控訴趣意第一点について。

原審は本件公訴を棄却すべきであるのに、不法に受理して審理したるは失当であるというのであるが、本件記録を閲するに、本件起訴状中公訴事実冒頭において「被告人両名は若井一己を主導とする暴力団を組織し暴力を誇示して芦品郡服部村民を圧迫し居りたるが」と記載している。然し斯かる事柄は本件罪体と何等の関係なく、裁判官に、事件について予断を生ぜしむる虞あるものとみるべく、現行刑事訴訟法は第一回の公判期日前においては、裁判所に対し、一切の予断を与えることを禁じ、所謂起訴状一本主義を徹底せしめ、公判の審理は当事者双方の攻撃防禦によつて進行し、裁判所は白紙の状態でのぞむたてまえをとり、同法第二百五十六条第六項の規定は厳格な効力規定であつて、これに反する公訴の提起は手続に違反し無効と解す。而して本件起訴状に前示文詞を記載したるは、明かに該規定に違反するもので、公訴提起は無効といわねばならぬ。然るに原審がこれを受理して審理したるは明かに法令に違反し破棄を免れない。論旨は理由がある。

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